# 参考:遺失物の返却率についての統計調査
本文書は、ノートPC盗難・紛失対策(G-PHY-01)の検討過程で収集した、遺失物の返却率に関する統計情報をまとめたものである。対策案本体のスコープ外だが、背景情報として後日活用する可能性があるため、別文書として保存する。
> **【筆者注記】利害関係の開示**
> 筆者は本稿で取り上げた組織・企業・団体・プロジェクト等との業務上の関係、出資関係、競合関係はない。
> 本稿はいかなる外部主体からの委託・資金援助も受けておらず、独立した調査・分析に基づく。
> **本記事の作成プロセス**
> 本記事は、運営者とAIの協働により作成しています。作成プロセスおよび品質管理の詳細は、[[サイトポリシー#1.2 AI の利用について]]をご参照ください。
## 更新履歴
| 日付 | 更新内容 |
| ---------- | ------------------------------ |
| 2026-03-08 | 利害関係の開示と、本記事の作成プロセスを追記 |
---
## 1. 国際比較:落とし財布実験(Cohn et al., 2019)
2019年にScience誌に掲載された、市民的誠実さ(civic honesty)に関する大規模フィールド実験[^1][^2]。
### 実験概要
- 40カ国、355都市で17,303個の「落とし財布」を公的・民間施設の受付に預け、所有者への連絡率を測定
- 財布はすべて透明で、名刺(メールアドレス記載)、買い物リスト、鍵を含む
- 条件:金銭なし(NoMoney)、少額(各国購買力に応じUS$13.45相当)、高額(US$94.15相当、3カ国のみ)
### 主な結果
- **全体平均**:金銭なし40%、少額51%、高額72%が所有者に連絡された[^2]
- **国別の幅**:中国14%〜スイス76%[^3]
- デンマーク、スウェーデン、ニュージーランドが75〜82%で最上位[^4]
- 中国、ペルー、カザフスタン、ケニアが約20%で最下位[^4]
- 米国は57%で、欧州諸国・カナダ・オーストラリアよりやや低い[^4]
- **金額が増えるほど返還率が上昇**するという、古典的経済学の予測と逆の結果が38/40カ国で確認された[^2]
### 日本が除外された理由
日本はこの研究の対象国に含まれていたが、最終的にデータから除外された。研究チームのFAQによれば、日本には交番(Koban system)という独自の仕組みがあり、市民が遺失物を交番に届けるため、個々の財布を追跡(UIDに基づく条件判定)できなかった。研究チームは「日本の返還率が低かったから除外したのではなく、市民的誠実さでは相対的に高い方だったと考えられる」と述べている[^1]。
### 備考:OKOBANの語源
OKOBAN(国際遺失物追跡サービス)の名称は、日本の「お交番」に由来するとされる。日本の交番が果たすLost & Found機能を、民間レベルで国際的に具現化する意図で命名された。
---
## 2. 日本国内の統計
### 2-1. 警視庁(東京都):届出現金の返還状況
| 年 | 届出現金総額 | 遺失届総額 | 届出率 | 返還額 | 返還率(届出現金に対して) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019年 | 38億8,423万円 | 84億3,952万円 | 46.0% | 28億4,460万円 | 約73% |
| 2022年 | 39億9,652万円 | 69億5,283万円 | 57.4% | 29億5,494万円 | 約74% |
| 2023年 | 44億636万円 | 80億4,310万円 | 54.7% | 32億3,463万円 | 約74%* |
出典:警視庁遺失物取扱状況(各年)、nippon.com報道[^5][^6][^7]
**注1**:「届出率」は、遺失届の総額に対して警察に届けられた現金の割合。届けられなかった分がすべて持ち去られたとは限らず、発見されていないものも含まれる。
**注2**:2023年の返還率(*印)は、同年に処理された金額(43億6,052万円)に対する返還額の割合。届出現金総額(44億636万円)と処理済み金額に差があるのは、前年からの繰越等による。
### 2-2. 物品別の返還率(2014年、28都道府県、警察庁調べ)
| 品目 | 返還率 |
|---|---|
| 運転免許証 | 91.9% |
| 預貯金通帳 | 86.7% |
| 携帯電話機 | 82.4% |
| 衣類・履物類 | 4.2% |
| ハンカチ | 1.6% |
| 傘 | 1.0% |
出典:内閣府「遺失物に関する世論調査」(平成28年12月)添付資料[^8]
**注**:身元特定が容易な物品(免許証、携帯電話等)の返還率は80〜90%台と極めて高い。一方、傘や衣類は返還率が極端に低いが、これは「持ち去り」ではなく「落とし主が取りに来ない」ことが主因とされる。
### 2-3. 拾得物の総数推移(東京都)
2019年の拾得物総数は415万2,190件(統計開始の1989年以降で過去最多)[^9]。2023年も引き続き高水準。
---
## 3. 米国その他の参考データ
- ABC News "Primetime" の非公式実験(2005年):米国各地で22品目を意図的に紛失し、9品目が返還(約40%)。連絡先が全品目に記載されていたにもかかわらず、この水準[^10]。
---
## 4. 対策案との関連(メモ)
- 日本国内では交番システムにより高い返還率が期待できるが、**出張先が海外である場合、この前提は成り立たない**
- 国別の返還率は14〜82%と大きな幅があり、出張先の国・都市によってリスクが大きく異なる
- OKOBANシール・視覚マーカーは、日本の交番システムの代替を個人レベルで携帯する手段と位置づけられる
- 落とし財布実験で「金額が大きいほど返還率が上がる」結果は、ノートPCのような高価な物品が必ずしも持ち去られるとは限らないことを示唆する(ただし、財布とノートPCでは状況が異なるため直接の適用には注意が必要)
---
## 脚注
[^1]: Cohn, A., Maréchal, M. A., Tannenbaum, D., & Zünd, C. L. (2019). Civic honesty around the globe. *Science*, 365(6448), 70-73. https://www.science.org/doi/10.1126/science.aau8712 (FAQ部分に日本除外の理由あり)
[^2]: Cohn et al. (2019), 論文本文PDF. http://urisohn.com/sohn_files/wp/wordpress/wp-content/uploads/6284-Cohn-Merechal-Tannenbaum-Zund-Science-2019-Civic-honesty-around-the-globe.pdf
[^3]: "Missing" Wallets with More Cash Are More Likely to Be Returned. *Scientific American*. https://www.scientificamerican.com/article/missing-wallets-with-more-cash-are-more-likely-to-be-returned/
[^4]: 'Lost' wallet study finds majority of people are honest. *MinnPost*, 2019-06-25. http://www.minnpost.com/second-opinion/2019/06/lost-wallet-study-finds-majority-of-people-are-honest/
[^5]: 東京での落とし物、19年は現金38億8400万円が警察に届く. *nippon.com*, 2020-04-30. https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00709/
[^6]: 東京での落とし物、2022年は過去最高の現金40億円弱が警察に届く. *nippon.com*, 2023-09-26. https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01799/
[^7]: 東京での落とし物、2023年は過去最高の現金44億円弱が警察に届く. *nippon.com*, 2024-04-19. https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01962/
[^8]: 内閣府政府広報室「遺失物に関する世論調査」(平成28年12月). https://survey.gov-online.go.jp/hutai/h28/h28-lost.pdf
[^9]: 一年間に「落とし物」はどれぐらいあるのか? *テンミニッツTV*. https://10mtv.jp/pc/column/article.php?column_article_id=2751 (警視庁データの解説)
[^10]: How Often Do Lost Items Get Returned? *ABC News*, 2005-12-23. https://abcnews.go.com/Primetime/story?id=1431187